藤田恵美さんのcamomile Best Audioで見つけたもの その三

 「Wide Awake」をもう何十回聴いたことだろう?何度聴いてもその素晴らしさに、瞳を見開いてしまう。いろいろな角度でも聞いてみた。やはり、自分のところでは、いつものシステムで聴くのが一番よい。よく聞くと、ボーカルは結構ざらついている。感情が先走っているからであろうか?マイクは何かな?ダイナミックには思えない。

 他の曲も何度も聴いた。このアルバムの音が、いわゆるベストオーディオであるのなら、それもいいだろう。こういう音を自分にインプットすることもまた面白い試みだ。何度聴いてみても、他の曲にはオリジナリティを今ひとつ見出せない。

 たとえば、「Desperado」。僕も始めてこの曲を聴いたのは、カーペンターズであった。カーペンターズは、僕の音楽の入り口であった。藤田恵美さんという方は、僕よりも少し若いが、ほぼ同じ世代といってよいと思う。僕はのちに、イーグルスの「Desperado」を聞く。今回のこのアルバムでは、イーグルスのほうが近いのか、唄い方がいわゆるクリシェのように聞こえる。イーグルスのこの曲を今すぐに聴くことができないのだが、カーペンターズは聴くことができた。カレンは、やはり独自色をもってこの曲を唄っていた。彼女ならではであり、さすがだなと感じた。

 他の曲でもそうなのだが、どこかで「のようなもの」を感じる部分が出てくる。VAMPたち(失礼ながら面識もなくこういう呼び方をしてしまうのはアルバムのコメントを引用してのこと)とのセッションで、独自色が出そうになるがひょいとクリシェに近いようなものが顔を出すと僕は興ざめしてしまうのである。が、「Wide Awake」ではそれを感じないのだ。

 「Tears in Heaven」では、僕はどうしてもクラプトンを思いだすし、彼の唄を超えるものを期待してしまうのだろう。かないまるという方が絶賛する理由がわからない。だから、「Wide Awake」を聴いて、「Tears in Heaven」へとつながると、僕は何度もストップボタンを押してしまうのだ。

 僕が単なるリスナーになれば、藤田恵美という歌い手さんを他の歌い手さんと比べるだけでよいのかもしれない。しかし、どうしても藤田恵美さんという知らない方の唄を、もうひとりの藤田恵美さんと比べてしまうのである。もう一人の藤田恵美さんこそが、「Wide Awake」を歌う藤田恵美さんであるのだが。本人にすれば、どちらも私で、どちらも本物よ、ということでしょうけれど。

 と、このように書いていると、ただ何回もこのアルバムを聴いているだけのように思われるかもしれないが、このアルバムを聴きながら、僕が一番変わったことは、平行して進める自分の曲のミックスをコンプレッサーなしで、このアルバムと聞き比べながら進めていることである。これは、もうかないまるという方が教えてくれたものである。そして、マスタリングまでコンプレッサーなしで追い込んで、できたミックスの素のよいこと。これが、mp3に圧縮しても音の劣化が少ないのである。これぞ、最大の発見にして、最大の喜びである。ベストオーディオというだけのことはあるね。