藤田恵美さんのcamomile Best Audioで見つけたもの その二

 昨日に引き続き、彼女のアルバムの音質をチェックしつつ、音楽のことを考えている。カーオーディオでも聴いてみた。車中では、いっそう聞きやすく、逆に「Wide Awake」では、ボーカルの個性が目立たなかった。うちのシステムとは違う印象だ。そして、何度も聞きなおすうちに、昨日の直感的な感想は、自分の中に確信をもって腑に落ちてきた。「Wide Awake」こそ、彼女藤田恵美さんの、本来持っている個性を引き出した曲だと。

 今日はたまたま、友達がイーグルスの新譜を貸してくれた。「ロングラン」以来のアルバム、といって言い過ぎではないだろう。彼らが本気であることが聞き取れる曲が何曲かある。こう書くと、例えば日本人は本気じゃないのか?ととられるかも知れないが、本気の質が違うのである。欧米と日本の差は、技術ではなく、オリジナリティへのプロフェッショナルの度合いなのである。これはもう、土壌が違う。誰もが人の模倣からはじまるが、人まねは最悪だという認識に日本人が欠けていることは1980年代から変わっていない。それ以前か?

 で、何が言いたいかというと、藤田恵美さんの独自性は「Wide Awake」にこそ珠玉として曲に現れている。いや、ボーカルに顕れている。ここから、一大絵巻がはじまるはずなのだが。環境はそうではないようだ。でも、VAMPたちは、一緒に演奏していたからわかっていたはずだ。そして、その意味を彼女は理解していないか、あるいは環境やもろもろとの兼ね合いから封印していたか?

 僕のような意見は、日本ではまだまだ少数派だが、芸術家というものは本来、未知なるものとの壮絶な出産を描き出すものであろう。そこには守るべきものがない。藤田恵美さんは「Wide Awake」において、そこを表現できた。そういう意味で、この曲を聴くことができたことは、今回のもっとも大きな発見なのである。