音楽っていったい

 家庭を持ったり、他の仕事を持ったり、あるいはからだを壊したり、生きていく上ではいろいろなことが起きるものです。そんな時に、音楽あるいはライフワークとされるものから多少なりとも離れることがあります。音楽が憎くなって、音楽を恨んで、音楽から離れるということは、僕の場合にはありません。

 僕も、農の世界に入って、数ヶ月もギターを弾かない時期というときもありました。しかし、たとえ音楽を聴かなくても、音楽という存在を心の中からなくしてしまうということはありませんでした。音楽というものが、必ずひっかかってくるのです。そんな時に、音楽から僕は完全に自由になりました。音楽をしたいからするだけです。理由はありません。

 29歳の時に東京を離れた時に、僕の周囲では、皆僕が音楽を諦めたと思っていました。都落ちだと。でも僕は違っていました。音楽を一から考え直すために、帰農したのでした。あくまで音楽がメインです。しかし、農の世界もまた面白いので、とことんのめりこんで今に至っています。あれから丸18年が過ぎようとしています。僕の音楽への気持ちは、やわらぐどころか、より強く強くなっています。

 19歳から29歳までの音楽の相棒であったjoeと、一昨年から音楽を再開していますが、僕たちの中に焦る気持ちはありません。一年に一度のレコーディングが精一杯なのです。彼のドラムスのインストラクターの仕事も忙しいし、僕の農の仕事も忙しい。でも、コンピューターなどの発達によって、焦らなくてもじっくりとしかも良い音質で録音することが出来るようになりました。時間がとれなければ、とれるまで待つのです。

 今日は、農の仕事の週に一度の休みなので、農の仕事はしないで音楽に集中するつもりでいました。しかし、農の仕事もしたくてしてしまいましたし、子供たちに付き合うこともしなければいけませんでした。サッカーの韓国戦もありましたね。昼寝もしました。しかし、少ない時間の中で、Nuendoに向かい、ギターを弾きました。録音はしませんでしたが、ベースのエディットを進めました。

IKのAmpeg SVXは、実に素晴らしいです。エレキギターをMIDI入力してTrilogyの音を出し、リアルタイムでAmpeg SVXをかけて弾く。エレキギターは完全にベースの重たい音を背負っています。どんなにエレキギターの弦が細くても、太い弦を弾いている感覚になるのです。これだけでも、実に音楽は楽しいのです。そこに、音楽業界の存在は一切存在しない。人の目も耳も気にすることなく、音楽を楽しめるのです。創作できるのです。音楽というものはそういうものではないですか?

 音楽に基本は絶対的に必要です。言い切ってよいでしょう。しかし、自由に音楽を楽しんで創作できること、これはさらに必要です。そして、音楽小僧、音楽馬鹿、ギター小僧になってよいですが、それ以前に人間であることを忘れない、そういうこともまたとても必要なことです。技術は必要ですが、技に向かう芸人根性よりも、音楽に向かうあかのままの人間であることが重要であることを、この国の人は忘れているような気がします。ギターやベースの人まねのような早弾きは、畑に出てしまえば何の必要も感じなくなるものです。