しばし迷う

 アナログかデジタルか、という選択はよくある話だけれど、デジタルオンリーでなければ常について回る問題だ。
 スティーリーダンの数年前の新作「エブリシング・マスト・ゴー」が、アナログMTRでベーシックトラックを一発録りされたあと、PCM-3348へいったん移植され、そのままオーバーダブをデジタルで行い、編集もプロツールスなんかとデータ交換しながらされた様子が、2003年8月号のサウンド&レコーディングマガジンに書かれていた。最後は、PCM-3348とアナログMTR(STUDER)を同期させてミックスしたとのことで、あの素晴らしい音はアナログでないと出ないというような記事であった。

 オーディオマニアの友人Tというよりは、最近はオーディオアドバイザーのようなTであるが、いろいろ相談した。やはり、アナログも最高級クラスのMTRとミキサー卓を使えば、デジタル以上の音が録音できるが、それにはお金もメンテナンスも要する。それよりは、デジタルである程度いい音で録っておいて、数年したら技術の進歩でまた格段に良いミックスが期待できる、というところに焦点を絞るほうが良いということであった。デジタルのノイズを取り除くには、電源ケーブルなど、さらに注意深く配慮しなければいけないので、数年かけてもセッテイングを良くしていくほうが得策だと、自分も判断したのであった。

 自分が納得できる音が、NUENDOからモニターへと流れていれば何も問題はないのである。そうでないからいろいろ試してみる。自分のイメージと音の可能性が一致すれば、音数を減らして、空間のあるミックスに持っていける、という確信は変わらないのだ。

 ようやく、「山を崩さないで」の録音に戻ることができた。しかし、確信にはいたらない。