エディットする必要がない

 ギターシンセ、というものを誤解していたかもしれない。始めて導入して、これはもうシンセサイザーという領域ではないな、と感じた。おもちゃとして、二日ほどいじってみたが、レコーディング機器として対峙してみると、ギターのエフェクターに近いかな、という感じだ。

 これは誤解を与えかねないが、エフェクターを愛用している人にとっては、ギターシンセというものはエフェクターではない。エフェクターは音を変えるもの。ギターシンセは音を加えるもの、といったほうがわかりやすいかもしれない。

 やり方がある。ギターと音源を混ぜて使うやり方。ギターを別出力して、音源も別出力して、最終的には混ぜるというやり方。音源だけを出力するやり方。

 この音源だけを出力した場合には、エフェクターとはいえない。完全にギターシンセだ。が、シンセサイザーという単体の鍵盤と音源のセットという概念はもはや崩れている。シンセサイザーは、ソフトシンセが出てきて、音源とMIDI入力機器の合体版に近くなった。シーケンサーを内蔵しているとはいえ、鍵盤のタッチと音源の豊富さがいのちと言えるだろう。
 もっとも僕は、M1という古いものしか所有していないし、それとて今は音源部が壊れて、MIDI入力機器と化し、音源はKORG Legacy Collection DIGITAL EDITIONにとって替わられている。この事例は、これからの時代、シンセサイザーが後代にソフトシンセ化されることを物語っている。
 話がそれた。

 それで、このRoland GR-20というギターシンセ。僕にとっては、エフェクターになる。
 それは、今回の曲のレコーディング過程で明らかになった。
 最初に、セッションで曲が出来た。次に、オベーションのクラシカルギターでギターのリフというかアルペジオを構築。弾き語りで唄える曲になった。そのままエレキギターに変えて同じことを弾く。それは、か細い演奏になった。だから、いろいろな楽器を加えることにした。

 そこへ、ギターシンセを導入した。エレキギター一本で、ストリングス効果まで出せるので、音が伸びやかになり、音数を減らしても音の厚みが薄っぺらにならないで済む結果となった。そのことを今日確認できた。つまるところ、スリーピースのドラムスとギターとベースという編成でも、音の広がりのある音色の豊かなバンドとして成り立つことに、このギターシンセは活躍できるのである。

 ギターの基礎をしっかりやったのならば、エディットすら必要がないのである。ギタリストが、専門外の鍵盤をある程度かじっても、和声的にもリズム的にも本職のギターに対する時とニュアンスが違う。だからこそ、ギタリストが鍵盤を弾いて、エディットすることとは違ってくる。