親はいつだって、目の上のたんこぶ

 人間にとって、最初に影響を受けるのが、たいていは親だ。甘えるのも親だが、物心つけば叱られるのも親だ。いつしかそれは、たんこぶに変わる。が、たんこぶには必ずメリットがある。今まで育ててもらったことを忘れても、今を養育してもらっているという事実。それは、働き出すことで少し環境が変わる。

 働く前の直前の環境が、大学生であったり、高校生であったり、中学生であることもある。その頃が一番多感な時期だ。誰だって、親のことが気に入らない、とか、何で自分をわかってくれないんだろう?などと思うことがあるはずだ。

 僕の高校時代は、親と口を利かなかった。母親とは、便宜上、必要最低限のことをしゃべった。もちろん、本音は言わない。父親とは、一言も交わさなかった。やり方が気に入らなかった、ただそういう理由だった。

 しかし、僕が友達を大勢つれて帰ってきて、マージャンや宴会を盛大にやっても、何も言わなかった。「うるさくて眠られない」という苦情は言ったが、それだけだった。あとで聞けば、おふくろは相当心配していたそうだ。男の子っていうものはこういうものなのかと。しかし、親父は、「ほっておけ」一点張りだったようだ。

 その時期をのぞいて、僕はおふくろとも仲がいいし、もう死んだ親父とも晩年は仲が良かった。あの断絶的な高校時代があったからこそであろう。そのときに、親父やお袋は、僕に対して結論を急がなかった。結果的に、僕は浪人はするは、大学に入っても留年はするは、で、親に迷惑をかけっぱなしだった。その頃に親父がどんなに借金をしていたとしても、親父は気前よく授業料を支払っていた。馬鹿な息子だ。

* 子供の側は、わがままをすればいい。

 子供にできることは、精一杯に自分に忠実になることである。それは、自分のしたいことをするということだ。自分がしたいことをできないから、邪魔な存在を消してしまうということではない。自分のしたいことをどうにかしてする、親を困らせてもする、本当にしたいことをわかってもらおうなんて思わなくていい。親を殺したら、わかってもらえる相手がいなくなる。

 何かにつけてうるさい親を、気にしないで自分のやりたいようにやる。そこのエネルギーを信じよう。自分のエネルギーを信じるのだ。親からもらった命だが、生まれながらにして、親とは別のエネルギーを抱えきれないほど持っているんだ。生まれてくる意思は、親からもらったものではないぞ。自分の意思で生まれてきているんだ。命は親からもらっているが。

 わがまま、というのは人を困らすことだ。人を殺すことはわがままではない。殺したら、わがままをいう相手がいなくなる。わがままというのは人を困らせるが、その人というものは、必ず君を心配している人なんだ。不特定多数の人を困らせるのは、わがままではない。